よろしくお願いします。今日はなかなか胸が熱くなる、本物のしくじりを持ってきました。自己紹介はちょっとすっ飛ばして、「僕らKaizen Platformのお話」と「どんな罠にハマったか」、「リーダーに必要なこと」という3つの話をしますね。
Kaizen Platformはどういう事業かというと、サイトの改善をやっています。Webサイトに対して、7,000名ぐらいのグロースハッカーの人たちが改善案を出してくれて、サイトのコンバージョンを高めていくことができるサービスです。お客さんのWebサイトのコンバージョンを高めていくので、基本的には長期契約するビジネスです。だいたい平均で20か月ぐらいの長さでお取引します。
売り上げが30%減。資金ショートの可能性も
サービス開始から、売り上げがそこそこ順調に上がっているように見えますが、今日は「売り上げが30%ぐらい下がりました」という最近の話を持ってきました。結構シビれるやつです。
普通に考えるとこれは危機的な状況なんですが、実際に売上が3分の1ぐらいすっ飛ぶとどういうことが起きるか、皆さん想像できますでしょうか。僕らの場合は「このままの状態が続くと半年後くらいに倒産する」とすぐに分かりまして、「これはまずい」ということになりました。
原因はあまり詳細に説明する程でもないんですけど、半分ぐらいは戦略を失敗した結果で、半分ぐらいは前のクォーターの一時的な売上分がなくなったという話です。
ピンチに陥ったとき、CEOができることは
では、あなたが経営している会社が半年後に資金ショートするとわかった時、CEOは何をしますか?「1.売り上げを上げる」、「2.コストを下げる」、「3.資金の手当てをする」。さぁ、どれでしょう。
答えはですね、全部やりましたと。当然ですよね、当然です。3分の1減ると結構なインパクトになりますので。
スタートアップや新規事業、自分のサービスをやっている人たちって、スーパーマリオに例えられると思うんです。スーパーマリオは、障害物や敵を越えながら一定時間内にゴールにたどり着くゲームですよね。今回の件は、我々がマリオだったとした時に、本当のゲームオーバーとは何なのかということを考える良いきっかけになりました。
スタートアップが本当に生き絶えるときはいつなのか
要は、「スタートアップが本当に息絶えるときは、資金がショートする時なのか」ということなんです。僕はそうではないなと思いました。
株式市場は「ファンダメンタルズ」と「センチメント」という2つに分かれていますよね。「ファンダメンタルズ」はいわゆる足元の業績などです。「センチメント」は投資家の心理的、感情的なものです。さっきのマリオに例えてみると、本当のスタートアップのゲームオーバーは、ファンダメンタルズではなく、センチメントがやられた時だと思うんです。チームのメンバーが「もうダメだ」と思った時に絶対にダメになる。逆に言うと、ファンダメンタルズがズタボロでも、チームのメンバーが全員「いや、これはイケるぞ」と思っていたら、多分そのゲームは続くんです。
事実に対するチームの感情を考慮に入れる
起きた出来事に対して、チームや自分たちの感情がどう動いているのかに目を向けるのがすごく大切です。売り上げの3分の1がすっ飛んだ。その時にリーダーができることは、さっきの「売り上げを上げる」、「コストを下げる」、「資金の手当てをする」ということはもちろんですが、1番最初にやらなければいけないことは、チームメンバーや組織のメンバーに「いやいや、全然大丈夫だ」と言うこと。センチメントをケアすることです。
会社や事業をやっている方は分かると思うんですけど、良い出来事や悪い出来事が起こると、それに対する感情はちょっとずれて起こるんです。良い事が起きたら、あとから「おい、やっぱスゲエよかったね」ってなりますし、逆に悪い事が起きると、その時はあまりインパクトなくても、後からジワジワ気持ちも下がって来るんですよね。
業績が悪くなる事も何となく分かったし、ふたを開けたらものすごく悪くなってびっくりしたんですけど、僕が何をしたかと言うと、売り上げが下がり切った時に「大丈夫だ、もうこれ以上は下がらない」と言ったこと。ここから先は回復していくし、多分大丈夫と言ったことですね。
とにかく「僕たちがこの起きた出来事をどう受け止めるか」ということがすごく大事で、諦めたり、ネガティブな発言するやつの言動がジワジワ広がるのをとにかく防ぐ。それさえ防げば、あとは正しい事をやっているから大丈夫という自信がありました。ですので、あとは事実に対するチームの感情面の反応を見てました。
資金ショートのタイムリミットを見据えながら、須藤氏が取った行動とは。須藤氏が考えるリーダーシップのかたちとは
僕がその時メンバーにした話はとてもシンプルで、「3か月後には業績が多分元に戻るから、とにかく3か月間騙されたと思ってやってみて」ということです。そうすると、「まぁ、あいつがそう言ってるからとりあえずやってみるか」とみんな頑張ってくれた。3か月間という見通しを立てて、「大丈夫だ」と言えれば、なんとか頑張ろうとその事に集中していけるんです。
現代の事業や経営には、時間のコントロールがとても重要です。時間を短くするとか、時間を稼ぐとか。僕はリーダーシップとは「時間をズラすこと」だと思っていて、今回も僕の「3か月間」という言葉にさしたる根拠も無いんだけど、アイツが言ってるんだから大丈夫かと思わせられるのであれば、それはリーダーシップの一つだと思うんです。
事実としてファンダメンタルズが悪くなったときに、人間ができることは当然限られていて、効果が出るにも時間がかかる。正しいことだけをやっていても気持ちが萎えてくるんですよ。そこで、優しさというか、ロジックだけではない人間的な部分の両方が必要になると思うんです。正しい事をやって、あとは「大丈夫だ、大丈夫だ」って適当な事を言っていても、結果がついてくればちゃんと着地できる。
今日は本物の失敗の話をしたので、ちょっと引かれたかも知れないですが、僕が言いたいのは、失敗が起こるのは日常茶飯事だということ、事実と感情は分けて考えようということ、そして、個人の感情以上にチームや組織が受けとめている感情に目をやるというのがとても大事じゃないかということです。
この後どうなったかと言うと、結論からいくと業績は回復しまして、コストも精査する中で、結果的に、「資金ショートする」という予測の時から結局キャッシュがほとんど減らなかったんです。その判明したときの現預金と今の現預金があんまり変わってないので、要は会社がヘルシーになったということですね。
最初はさすがに僕も憂鬱でした。でも冷静に考えれば打ち手はあった。そのアイデアも皆が持っていた。ただ、効果が出るまでに時間が掛かるので、メンバーの感情を維持する時間をどう稼ごうかと考えた時に、これはもうただ1つ「大丈夫」という言葉だと思ったんです。
その間に現場もマネジメントもみんな正しい事をやっているという信頼関係があったからできた事ですけど、こういう時にリーダーのできる事は、そんなものということもできるし、ほんの僅かに見える事も重要なんじゃないかなと思うんです。
要は、失敗した時に自分がどう受け止めるかもそうですけど、そういう時のリーダーの役目は「組織の感情に目を向ける」ということではないかというところで、今日のお話を終えたいと思います。ご清聴ありがとうございました。
[Q&A]
実際に窮地に陥っていた時はどうだったのか
[Q1] いまこのお話を朗らかにお話できるのは、結果的に回復したからなんでしょうか?その時はとてもじゃないけどそんな状況じゃなかったとか……? [A1] 実はその時点よりもうちょっと前から、こうなる可能性があることは分かっていたんです。多分社長さんとかCEOって、ジェットコースターがいつから下るかなんとなく気づきますよね。「あ、これ多分下るわー」って。先に気付いてるんで、落ちてる時も「やっぱり落ちるかー」って思う。だから先に憂鬱でしたし、一方でどのくらいで止まるかもなんとなく計算していたので、憂鬱というよりは、そのあとどんな順番で何をするかとか、そういうことを考えることに集中してましたね。もちろん、ありのままをメンバーに共有すれば悲壮感が漂います。なので、「まぁそうなるよね…。」と思いながらも、どうやってみんなに説明するとフェアで、かつあんまり悲劇的にならないかを考えてました。
100人程度のメンバーにどうメッセージを届けたか
[Q2] いま社員数が100人程度ということで、どうやって100人隅々にコミュニケーションを行き渡らせましたか?中間管理職の人からのメッセージも統一化したのかとか……。 [A2] 最初にマネジメントの人たちを集めて、「大変です。このままだと会社が倒産します」と話しました。まぁシーンとしますよね。で、「打ち手を考えないといけないから、協力して」と言ったんです。すると、色んな人から例えばこうしようとかああしようとか、アイデアが出てきたんです。そういう感じでまず告白して、売り上げがなくなる、コストの使い方もまずいという話をして、その2日後くらいには現場の皆にも話をしました。そして、策を出したいということで、会議室を開けていろんな人たちを呼んで、こういうことできるね、ああいうことできるねといろんな話を聞いて。で、ここまでちゃんと見えてるならほぼ大丈夫かなと思ったんです。
その翌日朝に、海外のチームも呼んで、実際に何が起きたのかという話と、これから何をするかという話をして、「多分なんとかなります」という話をしました。
売り上げを1件の顧客に依存することのリスク
[Q3] 売り上げが落ちる前はバブルだったというお話でしたが、弊社(Peatix)も初期にそういうことがあって、売り上げの30〜40%を1件の顧客に依存していたんです。売り上げは嬉しいんだけど、このままだとまずいなと。それである時パッといなくなってしまって……。そういうバブルのような売り上げって良くないと思いますか? [A3]バブル的な売り上げかどうかは関係ないような気がします。もらえるお金は貰えばいいじゃんと。ただ、こっちがそれをあてにしている状態はまずいと思いますね。僕らはそれに対する策をあまり打たず、まぁ大丈夫だろうと好き勝手なことをやっていて、それが問題だった。なのでそれをバババッと一気に整理しましたと。「大丈夫」という言葉の根拠のなさもそのまま伝えてしまっていた?どこまでぶっちゃけてコミュニケーションをとったのか
[Q4] ちょっと人間性みたいな話になっちゃうんですが、根拠はないけど笑顔で「大丈夫だよ」と言ったというお話でしたが、「根拠がない」という事実は自分の中に留めていたのか、それとも誰かには相談したのでしょうか。 [A4]「半分くらい根拠はない」という話はしてましたね(笑)。ただ、根拠はないんだけど、そこが埋まっていく自信は結構あって。というのは、こうやって「まずいんだよね」という話をした時に、現場のみんなから「こうしたらいいですよ、ああいうこともできますよ」と、いろんなアイデアが出てきた。これだったらギャップは埋まるわと思いました。その時点で50%は埋まってなかったんだけれども、そこはみんなが埋めてくれるという確信があったんで、大丈夫かなと思っていました。ピンチに陥ったときの株主の反応はどうだった?
[Q5] 従業員だけでなく株主もいますよね。こういう時って本当にどう付き合ってくれるのかわかることもありますが、何かエピソードなどありましたか? [A5] まぁ良かったのは、この話を株主にした時も、誰もあまり何も言わなかったってことですね。「なんであの時何も言わなかったんですか?」って聞いても、「まぁどうせこの人なんとかするでしょと思ったから」と言われて。「気になることはあったけど、聞いてもしょうがないと思った」と。僕が評価されていることは「運」と「着地力」ですね(笑)。本来経営者は、こういうことを起こさないことが仕事だけれど、あなたの場合は起こしてもなんとかするでしょうと思ったとのことでした。
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